お知らせ
このたび、当院不整脈センター長の吉田医師が執筆した症例報告 “In vivo endoscopic visualisation of the Micra AV2 retrieval interface” が、European Heart Journal - Case Reports にアクセプトされました。
4月には当科市川部長の論文が医学雑誌に掲載されたことをお知らせしましたが、それに続き、当科から新たな臨床知見を国際誌へ発信できたことは、当院にとって大変意義深い出来事です。
今回の論文では、リードレスペースメーカである Micra AV2 を体内に留置した直後に、血管内視鏡を用いて、デバイスの「抜去時に把持する部分」を直接観察した症例が報告されています。
リードレスペースメーカは、従来のペースメーカのようなリード線を必要とせず、心臓の中に小さなデバイスを直接留置する治療です。患者さんにとって大きな利点がある一方で、将来的にデバイスを抜去する必要が生じた場合には、体内でどの程度組織に覆われているかが重要になります。
しかし、現時点ではMicraがどの程度組織に覆われているのか、特に抜去に関わる部分が観察可能な状態なのかを、生体内で客観的に評価する方法は十分に確立されていません。Micraは線維性組織に覆われると抜去が難しくなることが知られていますが、「実際に抜去できる状態なのか」を事前に判断する指標が限られていることが、臨床上の課題でした。
今回、吉田医師らは、血管内視鏡を用いることで、Micra AV2の抜去インターフェースを体内で直接観察することに成功しました。私たちの知る限り、Micraの抜去に関わる部分を生体内で内視鏡的に可視化した報告は世界で初めてです。
この成果は、単に珍しい画像を記録したというだけではありません。将来的に、リードレスペースメーカの抜去を検討する際に、内視鏡による観察が「抜去できる可能性を評価するための新たな指標」となる可能性を示した点に、大きな意義があります。
もちろん、今回の報告は一例の症例報告であり、今後さらに検討を重ねていく必要があります。また、内視鏡操作には専門的な技術が必要であり、すべての症例にすぐ応用できるものではありません。それでも、これまで評価が難しかった領域に対して、新しい視点を示した報告であることは間違いありません。
当院不整脈センターでは、患者さん一人ひとりに適した治療を提供するだけでなく、日々の診療の中で得られた知見を国内外に発信することにも力を入れています。今回の論文は、先進的な治療に取り組む現場から生まれた、臨床的にも学術的にも価値のある報告となりました。
また、本症例の画像および動画を医学的報告として公表することにご同意くださった患者さんに、心より感謝申し上げます。患者さんのご理解とご協力があってこそ、医学の進歩につながる新たな知見を社会へ還元することができます
これからも当院は、目の前の患者さんを大切にしながら、診療・教育・研究のそれぞれに真摯に取り組み、地域医療の発展とよりよい循環器医療の提供に努めてまいります。
論文情報
Akira Yoshida, Koji Hashimoto, Takehisa Nishiguchi, Minoru Ichikawa
In vivo endoscopic visualisation of the Micra AV2 retrieval interface.
European Heart Journal - Case Reports.